2009年3月10日

豊かな島プエルトリコ - 到着&第2日目

英語はプエルトリコの公用語となっているはずだが、昨年末に首都サンファンに滞在した友人は、英語はあまり通じなかったと言っていた。本当だろうか。夫はさすがに不安になって、マイアミ空港で急遽、スペイン語の旅行会話の本を買った。

しかし、買った本を見ると、どうもそれはヨーロッパのスペイン語らしいということ。スペイン語圏は広い。夫によると、スペイン、メキシコ、プエルトリコ、その他中南米の国々で話されているスペイン語は、それぞれ国や場所によって使う単語や発音が異なるということだ。

夫はスペイン語をある程度聞き取れるから問題ない、と私は勝手に思っていた。マイアミ空港で、スターバックスのコーヒーを片手に真剣に本を読み始めた夫。

「こりゃあいかん、雲行きが怪しくなってきた。コイツを当てにできるのだろうか・・・」私は何の勉強もしてこなかった。一瞬不安がよぎったが、まあなんとかなるさ。

まずは、絶対覚えていないと困る言葉から。お手洗いは「バニョス(baños)」で、婦人用は「ダマス(damas)」。マイアミ空港はすべての表示が英語とスペイン語で併記されているので、この2つはすぐに覚えた。

義母の家を朝9時に出て、プエルトリコへ到着したのが夜の7時。第1日目は移動だけで終わってしまった。空港内にあるホテルにチェックインして、マイアミ空港で買ったサンドイッチなどをホテルの部屋で食べてから寝た。

2日目の朝、空港で車を借りていざ西へ。本日は、北部から少し内陸に入った所にあるリオ・カムイ洞窟公園と、地球外知的生命体(つまり宇宙人)探査で有名なアレシボ天文台(映画「コンタクト」の舞台となった)に行って、夜は中央山岳地帯のコーヒープランテーションに位置する宿泊所に泊まる予定であったが、出だしが遅れたため、天文台は行けなかった。ご縁がなかったのだと思う。

2~3年前から自覚するようになったことがある。それは、旅で訪れることになる場所の数々は、本人の意志とは関係なく最初から決まっているかもしれないということ。何となく惹かれる場所にはご縁があり、逆にガイドブックお奨めの場所をいくら入念に計画していても、閉まっていたり悪天候だったりして、ご縁のない所へは行けない。

また、どんなに注意していても突然道に迷ってしまうこともあり、迷い込んだ所で前世がらみの人と出会ったりするものだ。安全な場所であれば、あまり細かく下調べなどせず、先入観もなく行ってみるのがよいかもしれない。すると、客観的に真正面から物事を見ることができる。

地図の青いピンが空港の場所。第2日目は、そこから赤いピンの所までをカバーした。



<リオ・カムイ洞窟公園>
数百万年前に地下水の侵食でできた、その規模世界第3番目という巨大地下洞窟。ここには、何百万匹ものコウモリや、目のないエビが生息しているという。広く深い地下の世界。まだまだ未踏の場所もあるそうだ。入植者が入るまで、この地には先住民のタイノ族が住んでいた。陥没穴の壁は、タイノ族によって刻まれた岩面陰刻で覆われているという。

ヘルメットをかぶってトラムと呼ばれる乗り物に乗り、どんどん下って行く。着いた先で降りて、そこから洞窟の中へ。

鍾乳石がお出迎え。




洞窟に入ってすぐ巨大な陥没穴が。淡い光が差し込んできて、みんなちょっと感動しているよう。土と水と光で育つ植物が緑鮮やか。


トンネルの反対側。この鍾乳石もなかなかスゴイ。

もうひとつの陥没穴。生い茂った植物のツルがまっすぐ降りてきている。



皆さんは、「ザ・ラスト・ウェーブ」という映画をご存知だろうか。30年ほど前にオーストラリアで製作された、リチャード・チェンバレン主演の超自然ドラマである。この中で、アボリジニ(先住民)の男性が洞窟に入って大いなる源へと戻って行くシーンがあるが、それを思い出した。この広い洞窟の中には、何とも言えない空気が漂っている。

「聖なる場所」という言葉が浮かんだ。その昔、ここに先住民の人たちがいた感触がする。

洞窟の中央部分には、家くらいの大きさはあるだろうか、巨大な石がある。この巨大な石が目に入った途端、その存在の持つ荘厳かつ偉大な力に圧倒された。大きな石の正面に立つと、私は考える間もなくシャッターを切っていた。そして、撮った写真をちらっと見てびっくり。

直接目には見えないものが、写真に写っていた。


「そう、これは聖なる石。ひょっとして、この石は先住民にとって大きな意味を持つものではなかったのだろうか」
一瞬、石と意識を繋げてもう一枚撮ってみた。

この石は中央が窪んでいて、まるで2つの石がくっ付いたような形をしている。その窪んだ部分から、間欠泉のように噴き出している白いものがおわかりだろうか。2枚目の写真では、全体を覆って石が見えないほどになってしまった。1枚目を撮ってからほんの数秒の間のことである。

この白い球体は、一般に「オーブ」とか「たまゆら」と呼ばれているものだと思うが、皆さんはどのようにお感じになりますか。

その後、トンネルの端まで行って戻ってきて、同じ石を今度は横から撮ってみた。今度は石だけがきれいに写った。


それにしても、この石は気の遠くなるような時間を経てここまで大きくなったと思うと、畏敬の念を抱かずにはいられない。洞窟の中へ入っていくのは、ある意味、地球の中へ入っていくようなもので、そこで形成されるすべてのものは、地球の記憶そのものであると言える。

この洞窟の中で思った。人間と地球の調和がとれ、地球と宇宙の調和がとれ、人間と地球と宇宙の調和がとれる日を願い、私は今ここにいるのだと。調和のためにここへやって来て、自分の中に調和を見出し、調和を残して地球を去りたいと。

元来た道を引き返し、入り口の陥没穴に戻ってきた時、そこには、入ってきたときより数倍も強い光が差し込んでいた。


闇を貫き降り注ぐ聖なる光


ここに来れてよかった。

洞窟を出たら、もう午後3時近くになっていた。天文台へ行く時間はなかったので、本日の宿泊地へ向かうことにした。

洞窟に来る道のあちこちにフルーツスタンドがあり、バナナやオレンジを売っていた。その他チキンバーベキューや謎の食べ物(?)など、売れるものを家から持ってきて、売って生活しているという感じ。貧しいかもしれないが、裸足で地面を力強く踏みしめて生きている感じがして、人間臭くて好きだなあ。

結局、夫はフルーツスタンドで車を止めてはくれず、私たちは途中の小さい町にあったファストフードのお店で、卵をはさんだパンを食べた。というか、それが唯一夫が理解できるメニューで、私が食べられるものだった。やはり英語なんて通じないし、メニューはすべてスペイン語で書かれている。

米国自治連邦区で通貨は米ドルといえど、やっぱりここは外国なんだ~!

これから向かう宿泊地は島の西側中央の山岳地帯にあり、一帯がコーヒープランテーションとなっている。ハンドルを切ったらすぐに切り返すという、全然視界がきかない細いクネクネ道をノロノロ運転で延々と2時間近く、胃袋が振り子のようになって、吐き気を催すほどクネクネ揺られながら進んだ。

道の両側は崖になっており、その崖に沿って建てられた家が点在する。カーブを切って、目の前に突然犬やニワトリや馬までが出現する。動物はみな放し飼いになっており、犬もニワトリも車が来ても慌てない。慌てるのは人間だけ。いやあ、すごい所だ。

道を数回間違えて、よくやく到着したときには、既に夕食の時間となっていた。宿泊所が経営するレストランから見える景色、これはもうジャングルという感じ。

パパイヤの木



夜の闇が近づくにつれて、山の中からさまざまな生き物の声が聞こえてきた。中でも特別大きな声で「コキッ!」と甲高い鳴き声が響いてくる。鳥かと思ったが、鳥は夜には鳴かない。これはその鳴き声から「コキ」と呼ばれるカエルであった。その声は、それから毎日、島のどこにいても夜になると必ず聞こえてくることになる。


世界で唯一プエルトリコにしかいないと言われていたコキガエル。最近、ハワイで確認された。農産物に混じって侵入した可能性があるということ。

大きな声はカエルだけではなかった。この日は金曜日だったが、週末を家族で田舎みんなで過ごすため街から来たプエルトリコ人の宿泊客たちが、夜になると外へ出てきてワイワイ話し出したのである。もう12時を回っていた。

「音楽かけて踊り出さないだけまだましか・・・」

それにしても、この国の人たちはよくしゃべる。私はベッドに横向きになって、上になっている方の耳に指を突っ込んだ。今日は長い一日だったなあ。

奇声も笑い声も遠くに押し流され、いつの間にか熟睡していた。

<つづく>

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