2008年6月21日

いのちの賛歌



太陽がまばゆい初夏のある午後、数年前から始めたオーガニック畑で草抜きをしていた。

しゃがんで無心に草をむしっていたところ、突然「手のひらを太陽に」の歌が勢いよく流れて来るのに気づき、ハッとして手を止めた。子供の頃に学校で習った懐かしい歌だ。

どこから聞こえて来るのだろうか・・・ここはアメリカで、誰かが音楽をかけているのではない。そう、それは直接私の頭の中に入り込み、そこから外に向かって響いていたのだ。気づくと、私はこの歌を無意識に口ずさんでいた。

♪ぼ~くらはみんな~生~きている~ 生き~ているから歌うんだ~
ぼ~くらはみんな~生~きている~・・・♪

弾むリズムに、なんだか胸がワクワクしてきた。

♪手~のひらを太陽に~すかしてみ~れ~ば~ ま~っ赤に流~れる~
ぼくのち~し~お~♪

このとき、歌に合わせて太陽に向かって手をかざしていた。目の前にある自分の手の中を、急流のごとく流れる血液が透き通って見えるようだ。そう思ったとき、この勢いよく流れる血液のように、急に体の奥からエネルギーが沸き起こり、体中がカァッと熱くなった。

♪みみずだぁ~って おけらだぁ~って~ あめんぼだぁ~って~♪

このとき、またハッとした。この歌を歌っているのは私だけでないと感じたからだ。しゃがんだまま思わず振り返ると、すぐ後ろで、腰くらいの高さまで伸びたエンドウ豆たちが楽しそうに「歌っていた」。下を見ると草が、土の中のミミズが、ブラックビートルが、そして肉眼では見えない微生物までもが歌っているのだ。

カメラで早いスピードでズームアップしていくように、目に入る部分がどんどん拡大されて、意識を集中すると、中まで透き通って見えてしまうような感覚に襲われた。すべての生き物が楽しそうだった。空中を飛ぶ蝶やハチや頭上をそよぐ風さえも、すべてのものがあらん限りの声で歌っているのを、私は体全体で感じ取った。

そのとき時間が止まり、私は異空間へ滑り込んでいた。

この生き物たちの大合唱に包まれ、私は地面にヘタヘタと座り込んでしまった。私を取り巻くすべてのものの生命エネルギー、この息苦しいほどの強烈なエネルギーが渦巻き迫り寄り、圧倒されそうになったのだ。耳をつんざくほどの大合唱。

この世界では、いのちに強いものも弱いものもなく、大きいものも小さいものもなく、優れたものも劣ったものもなく、すべてが等しかった。すべてが喜びに満ち、その精一杯の力で等しく光り輝いていた。そう私の心は感じた。

次の瞬間、私は見た。自分の胸のあたりから、きらめく太陽に向かって半透明の白いらせん状の渦が広がり出るのを。それと同時に、私は自分がいるこの空間に溶けて広がって行き、すべてのものと一体になった。

いのちの賛歌にすべてのものが光り輝き、喜びに満ちている。その中に自分が溶けて行き一体となったとき、大いなる源に抱かれた。それはとても懐かしくて温かく、父親のように力強く、母親のように優しかった。

そして、私はその一瞬、今まで経験したこともないような強烈な至福感を味わい、涙があふれ出た。

このとき、自分は生かされていること、虫たちや植物、風と同じように、自分も宇宙の一部であることを「はっきりと知った」。

時空を越えた大きな癒しの瞬間であった。

生きとし生けるもの、すべてが理由あってここに存在している。無駄なものは何一つない。そのことに気づき、自分が宇宙の一部であることを認識したとき、人間のおごりは消え、生きていることの素晴らしさ、生かされていることへの感謝の気持ちがおのずと沸き起こるだろう。

<2008年6月21日夏至の日に捧げる>

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