2011年3月7日

タロットを超えて

「俺は長い間タロットリーディングをやってきたが、何かが物足りない。自分のリーディングは、もう行き着くところまで行き着いた。これからどうしようか・・・」そう思い悩んでいた男性が、ある日、乗った飛行機で隣り合わせになった女性と会話をしていたら、その女性は自分はアーティストで、今こんなものを持っているんだと言って、何十枚にも及ぶ、自分が今まで描いた絵の写真をかばんの中から出して見せてくれたという。

「これだ、これなんだ!!」その絵を見た瞬間、彼の体に電撃が走ったという。「これをカードにして、俺はこれからこれを使うんだ!!」

紙の上で感じるままに指を動かして描くというタッチドローイングのワークショップを先日受けたときに、私は、創始者のデボラ・コフチャピンさん自らが今までにタッチドローイングで描いた絵を基に作られた、「ソウルカード」と呼ばれる60枚で1セットになったカードを買った。

これには、タロットカードのように数字や言葉は一切書かれていない。絵の意味やメッセージもない。絵や色使いも、決して綺麗とは言えない。どちらかと言えば、少し気味が悪いと感じるだろう。カードに添付されている小冊子には、使い方の提案がいくつかあるだけで、使い方の可能性は無限にあるとだけ書かれている。

「もう自分でリーディングできるとき、そうするときになって来ましたね」と、タッチドローイングのワークショップでデボラさんが言っていたが、私も、最近はそういう人が急激に増えていると肌で感じる。

人に言ってもらうことも助けになるが、自分の中から出てくる答えに耳を傾ける方が、その人にとっては完全に消化され、力になるのではないだろうかと私自身は思っている。

そのことを裏付けるようなことが起こった。

友人から内容公開の許可を得たので、先日友人と個人セッションをしたときのことをシェアしたいと思う。

彼女は今差し迫った問題は何も浮かばないということだったが、この日セッションをすることにしたことには、それなりの理由があるだろうと思い、ソウルカードを使ってみることにした。

まず表を向けてカードを並べ、自分が気になる絵を1枚選び、次に全てを裏にして、目に見えないレベルからのメッセージとしてのカードを1枚引いてもらった。

そして、2枚の絵を順に見て、自分が感じることを言葉にしてもらった。ロールシャッハテストではないが、同じ絵を見ても、彼女が感じることと、私が感じることとは大きく違う。ときどきフォーカスする対象をいくつか提案しながら、彼女の話を聴いた。

次に、この2枚を統合するカードを裏から選んでもらった。

特に裏から選んだカードについては、彼女から、一体どこからそう思うのかと思うほど詳細な描写があり、興味深い言葉も出てきたため、その時点で他の方法に入って言葉がけをし、どんな反応が出てくるかを見てみることにした。

すると、体の特定部分が反応を始めた。そこで、その部分にフォーカスしてみると、いきなり過去世と思われる情景が出てきたようであった。彼女の場合、ヒプノセラピーのように、情景を設定して導く必要もなく、意識を内側に向けているだけでごく自然に展開していった。

私はただ寄り添っていると、彼女の目の前に情景が次々と展開し、その人生の最期まで行き着いた。そして、死んだ後の世界に行き、その後、次に選んだ人生にまで進んで行き、その人生の最期の場面までへも行き着いた。この2つの人生が、物語の前編と後編であるかのように繋がって意味を成し、彼女はこれを客観的に見ることで、ここから気づくことがあった。

ただ寄り添っているだけで、これほどの展開があることに私は驚いていたが、過去世のストーリーを聴いているときに、彼女が選んだカードに目が行き、ハッとした。

セッションの最後に、裏から選んだカード2枚をもう一度見てもらうと、それが今見たその2つの過去世の自分と一致する絵であったことに気づいた彼女は、ひどく驚いている様子だった。

しばらくして、彼女は深く納得したようにうなずき、それまでずっと自分を悩ませていた「思考のパターン」が理解できたと言った。「『幸せは長続きしない』という考えが深いところにあって邪魔をしていて、自分がなぜいつもそういう風に考えるのか、この考えがどこから来るのかわからなくて、苦しい思いをしていた。それが今、この過去世を見て腑に落ちた。何かがスッキリして、もう今から自分がどうありたいかもはっきりわかった」

私にとって、とても嬉しい言葉だったが、彼女の気づきはそれだけに終わらなかった。

3枚のカードにはどれも2つの存在が表現されており、セッション前に、それは自分と相手という解釈をしていた彼女が、セッション後はどちらも自分だと言ったことであった。

「相手の中に見ていることは、結局は自分なんだよね。すべて自分」

そう言った彼女のすがすがしい表情が印象に残った。

セッションが終わった直後、それまで嵐だった空に光が差し、大きな虹が出た。彼女と一緒にその虹を見ながら、人間ってすごいな、と思った。気づきと共に、自分の中から出てくる答えは力強い。

その彼女と今日電話で話した。「今までは先のことをいつも心配していたけれど、今家族といっしょにいることだけで幸せだと感じることができて、安らげるようになったよ。今日は義母の誕生日で、今サーモンをオーブンで焼いて、これからみんなで一緒に食べるとこ」

あのとき見た虹は、そんな彼女への天からの祝福だったのだろう。すべて彼女の中から出てきた答え。それを消化した今、彼女は穏やかな幸せを味わっているようだ。

タロットにも虹がかかり、その向こうがチラリと見えたようにも感じられた。



<写真: デボラ・コフチャピン作 ソウルカード>

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