タッチドローイングリトリートの4日目に、森に入った。そこは、昨年のリトリートでも来た魔法のような空気に満ちた森である。
まずは、ドローイングをする場所を探す。今回は昨年とは違う場所を求め、体全体を触覚のようにしてトレイルを一人歩いた。古い大木がそびえ立つ場所にたどり着いたとき、ここだと思った。そこからふと顔を上げると、前方の少し離れた所にある樹に目が釘付けになった。
「樹に顔がある!」
稲妻が身体を通り抜けたような衝撃が走った。
その瞬間、意識がその樹の中に吸い込まれていき、不思議な空間に滑り込んだ。
それは樹なのか人間なのか?
境界線を越えると、区別することのできない世界が開けてくる。
樹と人間がひとつに溶け合う世界。
紙に向うと自然に指が動き始め、そこに現われたのは酋長であった。
彼は私が来ることを知っていたのか。
私が彼に気付くまで、そこでずっと待ってくれていたのか。
そもそも彼は誰なのか?・・・それは私なのか?
静かに目を閉じると、酋長と樹と私がひとつになる。懐かしい感覚が波のように押し寄せ、私を洗い流した。
静寂の中で、私に語りかける声が聴こえる。
「ここはあなたの内なる森」
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