その直後に、カナダにいるカーリンからメッセージが届いた。Facebook の投稿には英語では最小限のことしか書かなかったし、ブログは日本語のみであったにも関わらず、彼女からのメッセージはまるでブログを読んだかのような内容であり、私は心の中を読み取られたような不思議な気持ちになった。
カーリンは、今年7月にシアトル近郊の島で行われた5泊6日のタッチドローイング・リトリートの第3日目に、パートナードローイングで参加者30人の中からくじ引きで選ばれた私の相手である。彼女もサイコセラピストであり、海外移住をしたという点で、私たちは似ていた。
驚くほど鋭い洞察の持ち主である彼女からは、成熟した人という印象を受ける。鉄条網とコンクリートや壁に囲まれたベルリンで育ち、家庭でも学校でも自分を理解してもらえなかった息苦しい環境から逃れるようにカナダへ移住したと、話してくれた。「あらゆる闇を見てきた」という彼女の目からは、深い哀しみと慈愛が溢れていた。
その彼女から届いたメッセージを読んだ後、ふと、リトリートの最後に撮った二人の記念写真を見てみたくなった。リトリートの最後には、6日間の間に描いた100枚近い絵の中から1枚だけ気に入った絵を選んで一人ずつ写真を撮ってもらうが、順番を待っている間に、カーリンと私はお互いに絵を抱えて並んだ。
写真を見て、私はアッと声を出しそうになった。カーリンの絵は私が描いたしこりの少女と同じ構図であり、少女が腕に抱えているものまでも同じなのだ。私の絵は実際のしこりの形から描き始めて、それが結果的にまゆのようなものとなったが、カーリンの絵の少女もピーナツ型をしたむろの中にあった。
私はすぐにカーリンにメールを送り、一体どこからそのイメージが来たのか尋ねたところ、自分のインナーチャイルドの絵だということだった。彼女とはパートナーだったこともあり、共通するものを持った二人が引き合ったのだろうが、それにしても、少女の頭部が開いたり根となったりして天と繋がっているところまでが同じであるのには驚いた。
そうしてカーリンと自分の絵を見ていたら、ひょっとしたら、それは私たち二人だけではなく、人間の深層意識の元型であって、特に女性の集合意識のテーマに繋がるかもしれないという思いに至った。
そのとき、しこりの少女の絵を見た私の親友が言った言葉が心に響いてきた。「今、乳がんや子宮筋腫になる女性が結構な割合でいるけれど、子宮や乳房は女性としてのアイデンティティにも関係してくるね。子宮は内側にあるのに対し、乳房は外から見えるものだけに、女性であることを強く意識させるもので、例えば乳がんで乳房を切除するということは、女性にとって相当大きなことだよ」
実は、私はタッチドローイングのリトリートで一番気に入った絵として、ふくよかな胸をした女性を描いたものを選んだ。それは、美と調和と喜びを表すイメージとして、無意識の領域から現われたものであった。
象徴として描かれたアーチや惑星、頭上に抱える器とその中の炎、それらはすべて繋がって女性性の集合意識の領域へと広がっていくように思える。
カーリンと並んで撮った写真は、2つの絵を通してインナーチャイルドから成熟した女性へのストーリーを示しているように見える。絵のインナーチャイルドには愛と力が溢れており、健全な大人への道を示してくれているようにも思える。
私にとって、もはやこのしこりは良性・悪性といったレベルの話ではなくなっている。単なる物理的な細胞の話でもない。新しい意識と健全な女性性とは?女性に今何が問われているか?
魂が表現すると呼ばれるタッチドローイング。沈黙の中から指を通して魂が語りかける。無意識の領域から次々ともたらされるパズルのピースを手に、私は一体どこへ向かって行くのだろう。
魂はすでに知っているから、問いかけを胸に私はこれからも描き続けていく。
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